失色ブルー

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たとえば、なにかつらいことがあったときに空を見上げる、というのは、小説内の記述においてなら、常套化していると言っていいものかもしれません。ですが、もちろん、ひかえめに考えても、そのとき空に罪はない、と言えるでしょう。だいいち、目の前が真っ暗なときに、前より遠くすらも見ることが許されないのだとしたら、いったい視覚というものは、なんのためにあるのでしょうか。どんな短距離走でも、ゴールと言うのはここにはなく、数秒以上ぶんの時間の先にあるものです。べつの言い方をするのなら、「そこ」というのは、そもそも「今」ではなく「未来」の領域であると言うことが可能になるのではありませんか。「未来」を本質的に凝視めるのが眼球の機能ならば、空くらい見たってなんのことはない、と言っていいのではないかとわたしは思うのです。(「失色ブルー」より)

カテゴリ:
小説

収録作:
「味噌汁残高」
「平面日」
「青の時代」
「粉々に砕かれた未来のために」
「罰の味」
「トイレの神様」
「しおどき」
「失色ブルー」

PDFページ数:
177p

仕様:
zip(pdf/epub/mobi/書影)

最終更新日:
2021年3月29日

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14.3 MB
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